トーマツなど大手監査法人　社内教育やセミナー着々

国際会計基準（ＩＦＲＳ）の任意適用が今期から始まることを受けて、大手監査法人が専門部署の設置や自社の会計士の教育、クライアントへの説明など、さまざまな取り組みを活発化させている。監査料アップやコンサルティングサービスの需要創出を見込めるビジネスチャンスであるほか、大手としての存在感を示す好機でもある。上場企業の関心も高く、今後もこうした動きは強まりそうだ。

　トーマツは昨年秋に独自プログラムをつくり、所属する会計士が国際基準を体系的に習熟できるよう態勢づくりを進めている。同社の松宮俊彦会計士は「（前期と比較できるように）３年分の貸借対照表を作成しなければならない。相当前からの準備が必要で（金融庁が義務化のめどとしている１５年までには）あまり時間はない」と強調する。

　約２５００人の会計士を抱える新日本有限責任監査法人は、独自の「認定制度」を導入、すでに８００人強がＩＦＲＳによる監査に習熟したという。

　また、導入を検討している企業向けの対応も始まった。あずさ監査法人は「オンラインセミナー」と称して、ＩＦＲＳを解説する動画をインターネット経由で配信している。

　各監査法人が準備に力を入れるのは、クライアントへの義務である一方、監査料のアップや付随するアドバイスサービスなどの需要が見込める「ビジネスチャンス」（大手監査法人）でもあるからだ。強制適用が始まる前に採用するのは、海外展開が活発なグローバル企業が有力。あずさ監査法人が「ＳＥＣ（米国証券取引委員会）に登録している企業の監査を行っている強みを生かしたい」と強調するように、万全の準備で臨むことは、業界での存在感向上にもつながる。

　企業の関心も徐々に高まっている。日本経団連が４月に実施した調査では、「任意適用を前向きに検討する」と答えた企業と、「状況次第で検討する」と答えた企業を合わせると、回答企業全体の２４％に当たる９１社に上った。

　ＩＦＲＳの知識で先行している監査法人には、すでに企業からの相談や質問が相次いでいる。各監査法人は企業向けセミナーの開催も増やしており、あらた監査法人が３月に開いたセミナーには約５００人が参加。同社では「分科会では実務的な質問が活発に飛び交った」と、企業の関心の高さを強調する。

2009年 5月18日
参照フジサンケイ　ビジネスアイ