アクセンチュア、コンサルファームの強みを生かしハイブリッドクラウドに

次世代の企業システムの在り方としてクラウドコンピューティングが注目される中、インターネットプロバイダー、データセンター事業者、SIer、サーバベンダーなど多種多様な企業がクラウドビジネスに参入している。IT業界全体がクラウドをめぐり、これまでにないほど激しい主導権争いを繰り広げているのが現状だ。

これは大手コンサルティングファームも例外ではない。ITコンサルティングの視点でクラウドソリューションに積極的に取り組んでいるのがアクセンチュアである。同社は、パブリッククラウド、あるいは業界クラウドのメリットを最大限に取り入れながら、プライベートクラウド環境を構築する「ハイブリッドクラウド」を得意とし、国内外で豊富な事例を持っている。また、独SAPの「SAP ERP」や米Oracleの「Oracle E-Business Suite」(以下、Oracle EBS)に代表されるようなERPパッケージによる基幹業務アプリケーションを、IaaS(Infrastructure as a Service)で提供するサービスも開始するなど、先進的なソリューションを特徴としている。

●クラウドコンサルティングからSIへ

ITコンサルティング分野で世界有数の企業であるアクセンチュアは、クラウド導入に関するコンサルティングをはじめ、クラウドを取り入れたSI、さらには同社自身が提供するSaaS(Software as a Service)など、さまざまなクラウドサービスソリューションを提供している。

まずは、同社が最も得意とするコンサルティングサービス。これは、企業システムでクラウドをどのように活用すべきかコンサルティングを通じて分析するものだ。

「現在の企業システムにおいて、クラウドは無視できない存在になっています。そのような状況下、既存システムを見極めた上で、クラウドの導入余地や実際に導入した場合の効果、およびその実現プロセスなどのコンサルテーションを行います。クラウドを利用するとコスト削減だけではありません。1つは、ITのスピード、もう1つはシステムの柔軟性が高まることです。併せて最近は、全てのシステムが同じ仕組みを使うことでコーポレートガバナンスを強化できることも挙げられます。このようなクラウドが企業に何をもたらすのかというコンサルテーションが、それを実際に形にしていくクラウドのSIへとつながっていきます」(アクセンチュア エグゼクティブ・パートナー イノベーション&アライアンス統括 テクノロジー コンサルティング本部 沼畑幸二氏)

●パブリッククラウドの活用を常に視野に

クラウド事業者の多くは、SaaSやPaaS(Platform as a Service)を自社で提供するパブリッククラウド、特定のハードウェアを活用しオンプレミス型でクラウド環境を構築、または専用クラウド環境の IaaSで提供するプライベートクラウドを中心にビジネスを展開しているが、アクセンチュアはそうした他のクラウド事業者とは一線を画す部分がある。例えば、アマゾンのAmazon Web ServicesやマイクロソフトのWindows Azure Platform、セールスフォース・ドットコムのForce.comなど、さまざまなベンダーのパブリッククラウドをプラットフォームとして採用し、それに対してアジャイル開発、ラピッド開発を実施するSIは、同社ならではの取り組みだろう。とりわけピーク時が予測不能なシステム、例えばインターネット上で新規ビジネスを開始するような場合は、こうしたパブリッククラウドを積極的に活用するという。

パブリッククラウドを部分的に巧みに利用しながら、従来のオンプレミス型システムとの連携させ、企業のニーズに合わせたプライベートクラウドを設計・構築する。さらに、これらのシステムの運用・保守から実際の業務まで請け負うハイブリッドクラウドがアクセンチュアの得意とするところだ。

「クラウドを部分的に採用している企業には、当然オンプレミスのシステムがあります。サービスレベルの異なる各種システムを連携させ、ユーザーに全く意識させないハイブリッドのクラウド環境は、今後数年間は必要とされるものです。当社では、こうしたハイブリッドのクラウド環境に対し、運用管理をアウトソーシングするManaged Cloud Serviceを提供しています」(沼畑氏)

アクセンチュア自身が提供するSaaSにも特徴がある。その中でも同社が積極的に展開しているのが、いわゆる業界クラウドだ。アクセンチュアの子会社である「Navitaire」は、ローコストキャリア航空業界向けのチケット予約・発券、会計業務システムを、構築からオペレーションまで一括してアウトソーシングで提供する。各航空会社のコスト抑制や業務効率の向上に寄与し、今や世界の約3分の2のローコストキャリアがNavitaireを採用しているという。

「アクセンチュアが目指すクラウドサービスは、企業の基幹システムを分解して“One to Many”で使う領域、言い換えれば“割り勘IT”です。企業のコアコンピタンスではない基幹システムを同じ業界が共通して利用することでコスト削減効果が期待できるのはもちろん、制度に変更があったとしても即座に対応することが可能です」(沼畑氏)

●基幹システムをクラウド化するサービスも提供

プライベートクラウドについては、コア領域の部分も従来のように全てを自前で用意するのではなく、クラウドを部分的に利用できないかというところから入っていくという。

「お客さまは、システムを既に持っているわけですから、今のシステムをどうするかということを考えます。多くのクラウド事業者は『わが社のプライベートクラウドのテクノロジーを使えば、こんなことができます』と言うものの、既存のシステムをクラウドへどうやってマイグレーションするかという話がないと不満の声もよく耳にします」(沼畑氏)

そうした課題の解決策としてアクセンチュアでは、仮想化技術を利用して業務システムをカプセル化して延命させることがもある。ただし、延命させたシステムでもサポート切れによって保証がなくなるといった課題があり、いずれは新しいシステムへの移行が迫られることになる。

「最近は、IFRS(国際会計基準)対応がトリガーとなり、基幹システムを再構築する動きが出てきています。そこで、新しいシステムをどこに置くかというのが議論になるわけです。SAP ERPを利用していればSAP ERPの延長線上で、Oracle EBSならば、Oracle EBSの延長線上でということになるでしょうが、当社では今の環境のまま新たなシステムを調達するのではなく、部分的でもクラウドをうまく活用する方法があるのではないかと考えています」(沼畑氏)

それを具体化したサービスとしてアクセンチュアが提供しているのが、「Accenture Online Service」である。これは、SAPなどが稼働する業務システム環境をアクセンチュアがIaaS上に用意してクラウドサービスとして提供するというもの。企業はライセンスと保守料金を支払えば、ハードウェアもミドルウェアも用意する必要はなく、バージョンアップなどの運用管理も全てアクセンチュアが引き受ける。既に欧州ではクラウドサービスの新しいビジネスモデルとして提供が開始されており、日本国内でも複数の企業と話を進めているという。

●日本の“ガラパゴスクラウド”化を危惧

アクセンチュアが、企業だけに閉じたプライベートクラウドよりも、適材適所でパブリッククラウドの採用を推奨するのは、欧米のクラウド市場動向を熟知しているからだ。

「プライベートクラウドを導入する際の大きな悩みは、ソフトウェアのライセンスです。例えば、プロセッサのコア数だけライセンスが必要なら、使っていなくてもランニングコストが掛かってきます。それに対し、欧州ではプライベートクラウドにオープンソースを採用して“One to Many”のサービスを提供しようという動きが進んでいます。米国では、政府も積極的にパブリッククラウドを採用してオープンガバメントやマーケットプレースを構築するなど、パブリッククラウドサービスを提供する米国クラウド事業者の背中を押す施策を取っています。『米国政府が採用するほど安全性が高いサービスなので、世界中で使える』というメッセージを発信しているわけです」(沼畑氏)

それに対し、日本のクラウド市場はかつてのPC、現在の携帯電話のように独自に進化する「ガラパゴスクラウド」になるのではと沼畑氏は危惧している。

「これからのクラウド時代は、競合ではなく共存だと思っています。今までは、システムを構築すればもうかった時代でしたが、今後は使われないともうからない時代になります。つまり、作って使われるまでが投資になるわけです。それを1社だけで行おうとすると、ハードウェアやネットワークなどのインフラを用意してシステムを開発したのに、利用する企業がなければ非常にリスクが高いといえます。ですから、今後は初期の段階からどのように手を結ぶか、戦うというよりも誰と組んでサービスを実現するかを考えることが重要になります」

2011年 3月2日
参照TechTargetジャパン

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