財務報告の内部統制開示制度１年目　「不備残った」２６％　改善課題

　企業に正しい財務報告を行う社内体制が整っているかどうかを示すため、２００９年３月期から始まった「内部統制報告制度」で、決算期末に「不備」の残った会社が全体の２６％に上ることが、あずさ監査法人が実施したアンケートでわかった。報告書への記載義務は「重要な欠陥」のみだが、軽微なものでも放置すれば内部統制が働かないことにつながるだけに、不備の改善が課題となりそうだ。

　アンケートは６月に実施し、３月期決算の上場企業７７２社から回答が寄せられた。

　初年度の不備の検出・是正状況を聞いたところ、期中に「重要な欠陥」を含む不備のあった企業は全体の７１％。ただ、期末に不備の残ったのは２６％で、３分の２の企業は是正したとしている。

　不備の中に決算・財務報告プロセスやＩＴ（情報技術）全般、業務プロセスに関するものなどがあった。あずさの斎尾浩一朗シニアマネジャーは「内部統制の２年目で不備をいかに改善するか、その対応がポイントとなる」と話す。

　≪規模小さいほど負担≫

　アンケートでは、企業の内部監査部門全体の業務時間のうち報告制度への対応に割かれた割合も聞き、企業規模ごとにまとめた。連結売上高５０００億円以上の企業で５３％だったのに対し、５０億円未満の企業は７２％に上り、規模の小さな企業ほど制度への対応が負担となっていることが分かった。

　あずさが３月期決算の上場企業による報告書の内容を分析したところ、「重要な欠陥」があったとした企業のうち、監査法人による決算書の修正や不正・不適切な会計処理など「顕在化した事象」があった企業は７８％にのぼった。不正が見つかり、重要な欠陥が「ない」といえなくなった企業が多く、自主的な内部監査の結果、欠陥を認めた企業は２割程度という。

　今回の結果を踏まえ、あずさは９月、２年目以降の対応について企業向けセミナーを開催。これに先立ち、トーマツも「導入初年度の反省を生かす」と題したセミナーを開き、企業から「子会社に非効率的な業務が多いと気づいた」といった声が寄せられていることを紹介した。報告制度への対応についてトーマツの杉山雅彦パートナーは「業務改革を実施し、会社をよりよくする好機になる」と強調している。

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【用語解説】内部統制報告制度

　財務報告を正しく行う社内体制かどうかを企業が自ら開示する制度。２００９年３月期決算から導入された。監査法人などの集計によると、３月期決算の上場企業の２％が、内部統制に「重要な欠陥」があったと開示。米国の初年度の１７％に比べると低水準だった。ただ、内部統制が機能していない日本企業が少ないのか、率直な自社評価を避けたのか、評価は分かれている。

2009年 10月9日
参照フジサンケイ　ビジネスアイ