本人も気づいていない「なぜこの商品を買ってしまったか?」を聞き出す

■ペルソナづくりの FAQ
前々回のコラム「ソーシャルメディアマーケティングの成否を左右するペルソナづくり」において、ソーシャルメディアマーケティングは生活者の主体的な参加が前提であることから、生活者のインサイト(深層心理における願望や欲求)や詳細な情報行動及び購買行動のパターンを理解することが重要であり、そのためには、ターゲットのペルソナをつくることが有効であると述べた。

ペルソナをつくる際に重要なデプスインタビューの対象者や質問項目の作成方法について述べてきたが、今回は、下記のようなデプスインタビューを実施する際に聞かれることが多い疑問点や留意点について述べたい。

・グループインタビューではダメか?
・インタビューは何人にしたら良いか?
・どのようにインタビューを進めたら良いか?

■無意識を解き明かす
マーケティングの現場において、グループインタビューはよく利用されるが、ペルソナをつくるためには向いていない。なぜなら次のような危険性があるからだ。

・他の人の手前、ホンネではなくタテマエを語りやすい
・強い意見に同調しやすい
・顕在化している表面的なニーズはわかっても、深層心理レベルの潜在的ニーズがわからない

生活者自身も「なぜこの商品を買ってしまったか?」という本当の理由には気づいていない可能性が高いのである。

以前のコラムか「顧客の無意識を解き明かす『ペルソナ』の作り方」でも紹介したが、ハーバード・ビジネススクールのジェラルド・ザルトマン教授は著書「心脳マーケティング顧客の無意識を解き明かす」(ダイヤモンド社)において、「消費者が自分たちの世界について体験し考えていることと、その情報を集めるためにマーケティング担当者が使う手法とのあいだに大きなずれが存在している」とし、従来の市場調査やマーケティング活動の「6つの誤り」として、以下「誤り」を前提としていると指摘している。

(1)消費者の思考プロセスは筋の通った合理的なものである
(2)消費者は自らの思考プロセスと行動を容易に説明することができる
(3)消費者の心・脳・体、そしてそれを取り巻く文化や社会は、個々に独立した事象として調査することが可能である
(4)消費者の記憶には彼らの経験が正確に表れる
(5)生活者は言葉で考える
(6)企業から生活者にメッセージを送りさえすれば、マーケッターの思うままにこれらのメッセージを解釈してくれる

私たち人間の脳は5%の意識的活動と、95%の無意識的活動に分かれるとし、消費行動も、意識よりも無意識が持つ領域が大きいため、一般的な定量調査やフォーカスグループインタビューで表面的な質問や誘導的な質問を用いても、5%の意識的活動の調査をしているに過ぎず、間違った認識と結論を持ってしまうと警笛を鳴らしている。

ペルソナをつくるために、生活者の深層心理や潜在的な欲求を理解するには、生活者自身も気づいていない無意識を解き明かし、理解しなければならないのだ。

したがって、グループインタビューでは難しく、one to one インタビューで行なう必要がある。

■n=3で理解する
インタビューは何人にしたら良いか?ということもよく聞かれる。これに答えるためには、まず、何人のペルソナを作るべきか?ということを決める必要があるだろう。

ペルソナは、たくさん作れば様々なセグメントに対応できるから良いという考えがある一方で、最も象徴的なターゲットに絞り込むために1人にすべきだという意見もある。

ここでもう一度思い起こすべきは、ペルソナをつくることが目的ではなく、インサイトや情報行動及び購買行動パターンを明確にして、それを共有し、活用するためにペルソナをつくるということだ。

したがって、絶対的な正解は無いが、複数の全く異なるインサイトがある場合に平均的なペルソナ一人に無理にまとめてしまったら、つかみどころの無いペルソナになってしまうし、5人を超えると、実際にペルソナを使いこなして活用することが難しいだろう。

ソーシャルメディアマーケティングにおいてペルソナを活用する場合は、インサイトのみでなく、情報行動のパターンが非常に重要なので、インタビュー実施前の定量データとブログ分析およびアンケート等の定性データによって策定した、情報行動パターンの仮説によってペルソナの数も異なってくる。

例えば、主要なターゲットにおいて、インサイトは同じでも、普段主に利用している情報機器(ex.PC、携帯など)やメディア(ex.SNS、ブログ、 Twitter)別に分けてマーケティングを実践する必要があるのであれば、ペルソナも分けてつくった方が良いということである。

何人のペルソナをつくったら良いかが決まったら、次に、ペルソナごとに何人インタビューをしたら良いかということになる。「何人インタビューした結果か?」と聞かれた場合に、多ければ多いほど安心な気もするかもしれないが、デプスインタビューは統計学ではないので、数が多ければ良いというものではない。

定量および定性的データの相当数から仮説を作った上での深層調査であることから、デプスインタビューは、量より質を重視すべきだ。通常、1ペルソナ当たり5?10人。熟練したインタビュアーであれば、1ペルソナ当たり3人でも可能である。

元マッキンゼーのコンサルタントである小川政信氏(インスパーク株式会社体表取締役)も、著書「フロンティア突破の経営力」(プレジデント社)の中で、多変量解析によるコンジョイント分析(※1)により、深層心理に近いレベルの行動特性を理解すれば、n=3のサンプル数へのインタビューで、現実の購買行動が手に取るようにわかり、市場の立体感も掴めるとしている。

デプスインタビューにおいても、数に頼らず、n=3でペルソナをつくる質の深さで実施すべきであろう。

■インタビューというよりカウンセリングを
「どのようにインタビューを進めたら良いか?」ということについても良く聞かれるが、今まで述べてきたことからわかる通り、ペルソナづくりのためのデプスインタビューは、通常のインタビューというよりも、カウンセリングに近いものである。

下記のような点に留意して行なうと良いだろう。

・できる限りリラックスした環境を用意する
・相槌や同調の言葉により、話しやすい雰囲気をつくる
・実際のシーンを思い浮かべ追体験できるレベルのエピソードを語ってもらう
・それぞれのエピソードの時の心情や理由をじっくり聞く
・用意したすべての質問をすることや順番にこだわらない
・話をさえぎらない
・情報行動と購買行動については5W1H で具体的に詳細を聞く

そして、最も大切なことは、「この人のインサイトは何なのか知りたい」という姿勢、さらには「相手のことをもっと知りたい」、「信頼関係を結びたい」、「自分の想いを伝えたい」、「喜ばせたい」、「共感したい」という情熱である。

※1 商品やサービスの持つ複数の要素について、顧客がどの点に重きを置いているのか、また顧客が最も好む要素の組み合わせはどれかを統計的に探る実験計画法。

筆者 Twitter はこちら。ご意見、コンタクトなどお気軽に。

執筆:株式会社ワールド・カフェ 代表取締役 笠原 造
監修:株式会社ループス・コミュニケーションズ 代表取締役 斉藤 徹

2010年 4月27日
参照japan.internet.com

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