【SAP】東電はSAP、東ガスはオラクル　電力自由化ＩＴ勝負

電力事業向けのＩＴ（情報技術）システムをめぐる競争が熱を帯びている。電力市場改革は新たな事業者の参入を促し、太陽光や風力など再生可能エネルギーの利用の幅を広げる。多様化する電力供給や変動する顧客の情報をどう管理していくかが、電力ビジネスの勝敗を分けるからだ。

■需給に柔軟に対応し、顧客情報も管理

　日本生活協同組合連合会（東京・渋谷、日生協）が出資する新電力、地球クラブ（東京・渋谷）が４月から、首都圏にある日生協の事業所など168カ所に電力供給を開始した。契約電力は２万キロワット。そのうち１割強は太陽光発電設備など自前の電源だが、残りは工場の余剰電力や卸電力市場など外部から調達する。

　現行制度では事業者は供給先の需要にあわせて、電気の供給量を30分単位で一致させなければならない。供給が一定の幅を超えて不足した場合は割高な罰則金を払う必要がある。供給先の電気の使い方や、天候や時間による需要の変化を正確に見極めることが事業収益を左右する。

　地球クラブで需給管理業務にあたるのは３人。高橋怜一事業部長は「日生協での仕事は人事でした」と笑う。それでも需要予測や卸市場からの電力調達などの業務をすべてこなす。需給管理は外部に委託することも可能だ。そうしないのは「需給管理は収支に直結する。自前でできるほうが次の展開が考えやすい」（高橋部長）からだ。

　需給管理を支える“助っ人”がいる。東洋システム開発（東京・港）の子会社、ｅ電力ソリューションズ（同）のパッケージソフト「らくらく電力」だ。

　予測した数値を打ち込むことなく、画面上で需要の曲線をマウスを使って変化させるだけで需要予測の増減を調整できる簡便性などが受け、約40社の新電力が導入した。新電力向けでは最大級の実績がある。

　だが、東洋システム開発の松本博之社長は「これからも新電力が求めるものに柔軟に対応していくことが重要だ」と気を引き締める。2016年４月に家庭向けを含む電力小売りが全面自由化される。電力市場のルールが大きく変わり、ＩＴシステムの重要性が一段と増すからだ。

　需給管理に加え、顧客の情報を把握し、多様なメニューにあわせて料金を計算して請求書を届ける――。新電力に限らず、既存の電力会社も従来のシステムから新しいシステムへの置き換えが必要だ。これができるかどうかが自由化市場参入の条件になる。

　東京電力で小売部門を担当する佐藤梨江子執行役員は「１週間で新たな料金メニューに対応できるシステムでなければならない」と語る。参入者を迎え撃つ東電は通信やガスなど異業種との提携を積極的にすすめ、域外での電力販売にも乗り出す構えだ。

　消費者を引き付ける料金や販売方法を先駆けて打ち出していく必要がある。既存のシステムのように、料金変更への対応に何カ月もかかっていては競争のスピードについていけない。

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http://www.nikkei.com/article/DGXMZO88012240S5A610C1000000/

2015年 6月16日
参照日本経済新聞