世界の事例にみるBPO成功の鍵――アクセンチュアに聞く

アウトソーシング大手のアクセンチュアにビジネスプロセスアウトソーシングを成功させる方法について話してもらう寄稿の2回目。

 大手石油会社であるBP(ブリティッシュ・ペトロリアム)はアクセンチュアの最初のBPOクライアントであり、BPの上流部門における財務・経理業務全般を18年前の1991年から受託している。このときBPの財務・経理部門のスタッフ320人がアクセンチュアに転籍し、BP向けの財務・経理業務を行うこととなった。これは単なるコスト削減のための転籍ではなく、BP向けのサービスをほかの企業にも提供し、コストセンターをプロフィットセンターに移行させるという、壮大なビジョンを見据えた計画の第一歩であったのだ。

 この「アバディーン・デリバリー・センター」は、設立当初から北海にて操業するメジャー(大手石油会社)の注目を集め、今日では450人のスタッフ(その約3分の1は公認会計士資格を保有)が、北海油田におけるメジャー6社に対して財務・経理業務サービスを提供している。

 またここで業務サービスだけでなく、業務に使用されるシステムも提供している。さらにクライアントに質の高いサービスを提供し続けるために、アバディーンのスタッフに対して教育・キャリア開発を支援。その結果、高いスキルと士気を持ったスタッフはアクセンチュアのほかのエネルギー産業のクライアントに対してもサービスを行うようになっている。

 アバディーン・デリバリー・センターは、アクセンチュアのコンサルティング・チームと常に密接な関係を保ち、ベスト・プラクティスや新しいテクノロジーを必要に応じてクライアントに提供できる体制が取られている。その結果、クライアントはより効率的で高品質なサービスを受けることが可能となった。ビジネス上の効果としては、これまでにオペレーションコストを50%以上削減している。

●エーザイ

 大手製薬会社のエーザイでは、優れた技術レベルとコスト・パフォーマンスの良さを併せ持つ地域にオペレーションを移す「トランスフォーメーション戦略」を推進している。特に製薬業界の開発競争が激化し、研究開発期間の短縮が非常にクリティカルな課題であり、臨床データ管理業務のグローバル標準化が急務であったことから、臨床データ管理業務について、既に当該分野で実績のあるアクセンチュアをパートナーに決定した。当初のBPOの対象業務は、臨床データ管理業務のみであったが、続いてeDC(electronic Data Capturing/電子的臨床情報収集システム)業務も対象となった。

 このBPOの特徴は、インドのチェンナイにあるアクセンチュアのグローバル・デリバリー・センターを活用し、日欧米の各地域に分散していた業務を集約したことだ。地域間での情報共有なども含めて臨床試験におけるデータ収集およびデータ報告の一層の効率化と迅速化を図っている。

 臨床データマネジメントについてアクセンチュアは、米国、欧州、日本などで、10年以上のプロセス設計・組織設計・システム導入などのコンサルティング経験を持ち、インドのデリバリーセンターを中心に、クリニカル・データマネジメント、統計解析、メディカル・ライティングなど、多岐にわたるアウトソーシング・サービスを提供している。

●サービス業A社

 A社は全社横断的なコスト削減施策が急務となっており、特に調達領域におけるコスト削減に関しては、リソース不足による目標未達が懸念されていたため、経営陣によって調達領域のBPOが決定された。BPOの対象業務は、購買トランザクション業務だけでなく、直接財・間接財に関するバイヤー業務も含んでいる。

 このBPOの特徴は、アクセンチュアが過去のコンサルティング経験などで蓄積した調達業務のノウハウを駆使して、調達業務のあるべき型を作った上で、契約終了後にはクライアントに業務を返還する契約となっていることである。バイヤー業務については分析/交渉など高度なスキルが必要であるが、初年度はアクセンチュアが主体となって、サプライヤー構造や取引条件の見直し、集中購買化、在庫水準、在庫配置の最適化といったコスト削減の施策を実行。

 2〜3年目にかけてA社における組織改革、および人員のスキル育成を行い、継続的な調達コスト削減を目指す。最終的に4年目以降はA社が主体となってコスト削減を継続、アクセンチュアはサポート役に徹することで以降のA社への完全な業務移管を目指している。

●日本におけるBPOの課題

 日本は欧米に比べるとBPOの普及が遅れているが、その理由としては以下が考えられる。

・1. 自前主義
・2. 終身雇用が前提の正社員、および対極にある派遣社員の存在
・3. オフショア市場の未発達(日本語コミュニケーションの壁)

 自前主義については、例えば企業グループ内で経理や人事業務を行うシェアドサービス子会社を構築しているケースが多く見られる。ただしそのシェアドサービス子会社の多くは一般的な市場競争を行っているアウトソーサーと比較した場合、高コストかつサービス品質が低いという印象がある。

 サービス提供先が自社であるために、どうしても市場競争に勝ち抜くことを前提としたアウトソーサーにコスト面、品質面で劣ってしまうのである。昨今の経済情勢悪化により、より大きなコスト削減や構造改革を目指す企業の中には、これらグループ内シェアドサービス子会社の取り扱いについても再考を始めているところがある。

 終身雇用が前提の正社員、およびその対極にある派遣社員の存在は、歴史的いきさつを含めた日本における雇用形態の特徴であり、それ自体を否定するつもりはない。ただし、この二極化された状態が現在幾つかの問題を引き起こしていることも事実である。終身雇用は安定を提供する一方で、グローバルで戦っていく上で必要となる優秀な人材の流動性を奪っているし、最近の経済情勢悪化に伴って派遣社員の多くはその制度上の問題から失業を余儀なくされている。

 わたしは、BPOが業務に必要な人材供給の新たなソリューションとなり得ると考えている。なぜなら企業はBPOを活用することで、ビジネスの拡大や業務量の増減に必要なリソースだけを手に入れればよくなるからである。さらにアウトソーサーの側では、国内の人材だけでなく海外の拠点・人材も活用することで、さらに複数のクライアントにサービスを提供することで、業務量の増減に対応することが容易となることが理由として挙げられる。

 オフショア市場のこれまでの発達について、インドは主に米国・英国をターゲットとしており、英語を話す人の数が多いこともあり2000年の段階では立ち上がっていた。一方で、中国には英語を話す人の数も、日本語を話す人の数も多くないため、オフショア市場の立ち上がりが数年遅れた。

 ここにきて、大連市をはじめとする中国のアウトソーシング拠点都市が活発化してきた。日本向けのIT関連サービスおよびBPOサービスの誘致にも力を入れており、日本向けのオフショア市場が十分に整備されてきたといえる。

2009年 9月7日
参照ITmedia エンタープライズ

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