SAPとパソナグループの協業にみるBPOの行方

SAPジャパンとパソナグループの子会社であるキャプランが1月15日、人事クラウドソリューションの分野で協業すると発表した。これに伴い、SAPのグループ会社であるSuccessFactorsがキャプランとビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)契約を結んだ。

 キャプランはSAPが認定する国内初のクラウドBPOパートナーとして、SuccessFactorsの製品を使った人事関連業務に関するクラウドソリューションの導入支援を国内で拡大するという。

 SuccessFactorsは2012年にSAPが買収した企業で、クラウド型人事ソリューション「SuccessFactors」を提供している。一方、キャプランは2010年からSuccessFactorsを活用した人事コンサルティングサービスを展開してきた。その意味で今回は協業の継続・拡大ともいえるが、今後、両社では案件紹介など営業面での連携も深めていくとしている。

 具体的には、キャプランがSAPのERPの人事ソリューションを採用している従業員規模1万人以上の企業に対し、SuccessFactorsを活用した人事コンサルティングとアウトソーシングサービスの提供を行う。また、約200人体制で営業活動を展開し、専門性の高いコンサルティングを実施するとともに、企業ニーズに応じた設計や導入サポートを提案していく構えだ。

 さらに、総合人材サービスを幅広く展開するパソナグループの強みを生かし、人材派遣や人材紹介などの採用支援をはじめ、教育研修、福利厚生、給与計算管理業務などのアウトソーシングサービスを提供する予定。加えて、企業のニーズに合わせて、請求処理業務やカスタマーサポートなど、さまざまなソリューションを組み合わせたサービスも今後、検討していく考えだ。

 両社の協業が興味深いのは、ITと人材サービスを連携させたBPOが一層広がるかもしれないというところだ。人事業務もさることながら、SuccessFactorsが実績を持つタレントマネジメントシステムによって各種業務に人材を配置すれば、BPOの範囲を広げられる可能性がある。しかも各種業務に必要なITツールは、SAPがほとんど取り揃えている。両社の協業は、そこまでの広がりをにらんだものだと見て取れる。

クラウドでグローバル展開も視野に
 両社が協業によってビジネス拡大を狙うBPOの国内市場は、矢野経済研究所の調査によると、2011年度から2017年度までの年平均成長率が2.5%で推移し、2017年度には3兆7439億円に達すると予測されている(図参照)。

ちなみに、同研究所ではBPOについて、「通常、企業内部にて行われるシステム運用管理業務、コールセンター系業務(コンタクトセンター、ヘルプデスク、フルフィルメント)、間接部門系業務(人事、福利厚生、総務、経理)、直接部門系業務(購買・調達、営業、コア部門単純業務、業界固有業務)などの業務を、顧客企業から業務委託を受けて代行するサービスを指す。ただし、従来から外部に委託することが一般的な税務、物流、情報システム開発、ビルメンテナンスなどの専門的な事業所向けサービスに関しては対象外とする」と定義している。

 同調査ではBPOをさらに、顧客企業からシステム運用管理業務を委託されて代行する「IT系」と、その他の業務を委託されて代行する「非IT系」に分類。2011年度から2017年度までの年平均成長率では、IT系の3.7%に対し、非IT系が1.1%と緩やかな成長になると予測している。

 SAPとパソナグループの協業は、このIT系も非IT系も両方、取り込んでいこうという思惑があるとみられる。

 また、パソナグループにすれば、人材サービス市場のトレンドも、今回の協業に踏み切った要因になっているといえそうだ。こちらも矢野経済研究所の調査によると、まず同市場の大半を占める人材派遣業は2012年度で前年度比4.6%減の3兆3400億円となり、4年連続で縮小している。一方、人材紹介業は市場規模こそまだ小さいが、2012年度で同9.5%増の1150億円となり、3年連続で拡大している。

 つまり、パソナグループにとって今回のSAPとの協業は、人材派遣業もさることながら、人材紹介業を一層伸ばし、BPOビジネスの幅を大きく広げていこうという思惑があるものとみられる。

 さらに、両社が見据えているのは、日本国内だけにとどまらないようだ。今回の協業の発表メッセージには、「この事業を通じて、グローバル展開を加速する企業にも最適なクラウドソリューションを活用することで、スピーディーに、また総合的に人事戦略を支援し、企業の競争力強化に貢献していきたい」との一文もある。SAPが代表的なグローバル企業なのは周知の通りだが、パソナグループも世界11地域でビジネスを展開するグローバル企業だ。そんな両社がグローバル市場を見据えているのは、想像に難くない。

 業務に精通したITと人材サービスの両雄が、今後どのような“化学反応”を起こすか、注目しておきたい。

2014年 1月20日
参照ITmedia

SAPジャパン

ヨーロッパで最大級のソフトウェア会社。SAPは世界で第3位のソフトウェア企業であり、その上にはマイクロソフト、オラクルが並んでいる。特に大企業向けのエンタープライズソフトウェア市場においては圧倒的なシェアを持っている。SAPの製品は、ERPに代表されるビジネスアプリケーション群で、最も有名な製品はSAP R/3というERP製品。SAPのシステムは、企業における会計システム、物流システム、販売システム、人事システムなどからなっており、それぞれがデータ的に一元化されているため、リアルタイムな分析が可能となっている。上記で挙げた業務システム(基幹システム)以外にも、CRM、SCM、PLMといった分野にもソリューションを提供していたり、大企業向けのシステムから中堅中小企業をターゲットにしたソリューションを提供してきている。

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