日本オラクルは2014年4月24日、業界別ソリューションをテーマとしたユーザーイベント「Oracle Industry Leadership Summit 2014」を開催。基調講演では、米国Oracle グローバルビジネスユニット エグゼクティブ・バイスプレジデントのRobert K.Weiler(ロバート・K・ワイラー)氏が、ICTを取り巻く環境の変化とそれによる産業構造の変化について講演を行った。
日本オラクルでは、従来、製品軸やサービス軸などでの提案が主流だったが、ここ数年は顧客企業の成長に直接貢献できるようにそれぞれの企業に合った「産業(インダストリー)別」での取り組みを強化している(関連記事:「IoT」「グローバル化」「ビッグデータ活用」がカギ――オラクルの製造業向け提案)。この流れの中、2013年には初めて、業界別に最適なソリューションを紹介する「Oracle Industry Leadership Summit」を開催。今回の開催は2回目となる。
消費者がIT支出の半分を担う時代
「Oracle Industry Leadership Summit 2014」のテーマは「革新的ビジネスを構想から実践へ」。基調講演では米国Oracleのワイラー氏が「The Power of Industries」をタイトルに講演し、ICT産業の変遷とそれに伴う産業構造の変化を紹介した。
ワイラー氏によると、世界のGDPは71兆ドルだが、そのうちIT関連に使われている費用は2兆690億ドル。その内訳は消費者のIT支出と企業のIT支出が半分ずつを占めているという。しかし、これは過去40年の歴史の中で大きな変化が見られる数字だと指摘する。
「長らくITは、企業が扱うものだった。しかしPCが登場し、インターネットが登場し、さらにモバイル機器などが登場したことで、飛躍的に消費者がITに費やす額が増えた。そして現在は半分は消費者が使うIT支出を占める。これが何を意味するかというと、消費者が非常に大きなパワーを持つようになり、企業がそれに合わせてビジネスモデルを変えなければならない時代になっているということだ」とワイラー氏は語る。
ただ、企業におけるIT投資が何に費やされているかといえば「82%が保守やメンテナンスに費やされており、新たな革新に対する支出は18%にすぎない。高まる消費者からの期待に応える体制を、企業が構築できていない状況を示している」(ワイラー氏)と指摘する。
2020年までにインターネットデバイスは500億個に
企業におけるIT投資が新たな技術に十分に向かってるとは言い難い状況の一方で、IT関連の技術の進展は“待ったなし”の状況だ。インターネットに接続可能なデバイスの普及は2012年に90億個を超え、2020年までに500億個を超えると見られている。また生成されるデータ量は、過去2年間で生成されたものが、それ以前のデータ量合計の9倍に達するほど加速度的に増えている。モバイル機器の圧倒的な速度の普及やソーシャルネットワークのビジネス化など、ICTのもたらす影響度は急速な勢いで高まっている。
このような影響を受け、通信や流通、自動車、金融、ハイテク、ヘルスサイエンスなど「個別で成立していた産業界は徐々に変容している」とワイラー氏は指摘する。
「企業は他の業界の技術を活用して変革(トランスフォーメーション)と革新(イノベーション)を行う。変革は同じ業界内からだけでなく、他の業界から来る。1つの業界内で成功したビジネスモデルを他の業界へ展開する場合など、業界を超えた変化が起こる時代だ」とワイラー氏は語る。
例えば、自動車メーカーが「コネクテッド・ビークル」の需要獲得に向けた取り組みを進めていたり、大手通信企業が最終販売ポイントとしての活用に関心を高めていたり、モバイルヘルスが大きなトレンドとなりつつある。ある業界の成功モデルを他の業界に持ち込む形や、複数の業界を跨るようなビジネスモデルへの志向が高まっている。
ワイラー氏は「米国の大手小売業ウォールマートがヘルスケアに注力したり、大手家電メーカーが医療機器に参入するなど、これまでの壁を超える動きが新たな変革へとつながる」と話している。
製造業は成長する市場に移動し続けることが重要
基調講演の終了後には、報道陣に対して質疑応答の機会が設けられた。主な一問一答の内容は以下の通り。
―― 製造業における課題をどのように見ているか。
ワイラー氏 常に成長する市場や産業を見つけ、作るモノを変えていくということが重要だ。それを見つけられるか、そうでないかということがそれぞれの製造業における課題といえるだろう。
例えば発電所や重工業などを考えた場合、グローバルで新たな都市などが作られる動きが活発な時はその市場に入れれば成長することができる。しかし再生可能エネルギーを活用することが中心になってきたら、従来のビジネスモデルを変革して、これらを提供できるように自らを変革しないといけない。
例えば、先進国や中国などを見ると高齢化が進んでおり、社会保険などの問題を各国が抱えている。これらを効率的に解決するための技術として、ICTを活用した医療機器やヘルスケア製品に注目が集まっている。そこでシーメンスやGEなどと同様に、大手電機メーカーも医療機器に目を向けるようになった。
このようにさまざまな市場を見ながら作るモノを変えるということが重要だ。
―― 日本のヘルスケア業界をどう見るか。
ワイラー氏 日本のヘルスケア産業はほぼ世界と同じ変化を示している。ただ、日本は世界よりも高齢化が進んでいるのでより影響度は高い。
日本は現在は病院中心型のヘルスケア産業となっている。ただ、それでは高齢化が進む中で効率が非常に悪い。日本の平均入院日数は17日だが、米国は3.9日。コストの観点からすると、医師が重病の人に集中できない。これを行うにはモデルを変えないといけない。
そういう意味では、もっと製造業は医療機器に取り組むべきだ。全世界でベビーブーマー(団塊の世代)の高齢化が進む。そうすると、医療が必要な人口はさらに増加する。大手家電メーカーが医療機器の製造に移行しているが、もっと取り組んでよいと考えている。
医療やヘルスケア分野において、日本は臨床試験とか医薬品の安全性などについては常に世界をリードしてきた。今後分子レベルの薬品開発などが加速する中、テクノロジーによる薬効の向上が進む。データ分析による効果的な薬品開発なども同様だ。例えば、米国ファイザーがデータ分析により、ある病気の5%が遺伝子の突然変異により発症していたことが分かった。それをターゲットにした医薬品開発できたという例がある。テクノロジーにより解決できる領域はかなり広いだろう。
2014年 4月24日
参照IT MONOist
日本オラクル
1977年、Oracleはデータベース管理システムソフトで起業し現在では業務アプリケーション市場で積極的なM&A(合併・買収)を展開しながらアプリケーション・サーバ、そしてミドルウェアへと徐々にラインナップを拡充しながらレイヤを上り、顧客企業が必要とするIT導入を全面的に支える随一の企業となっている。
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