武藤大和総研理事長「財政計画見直せば国際批判にさらされる」

大和総研の武藤敏郎理事長は23日午後、日本記者クラブで講演し、消費増税に関して「個人消費の腰折れが起こるかというとその心配が大きい状況ではない」と述べた。円安による輸出数量の増加が今後本格化するとし「輸出の先行きは明るい」との見方を示した。消費増税法の付則に盛り込まれた「経済状況の好転」との条件に足元の状況は「反しない」と明言し、消費増税を予定通り実施すべきだとの考えを表明した。

　消費増税の延期や税率引き上げペースの見直しが取り沙汰されていることに関しては「引き上げなかった場合、何が起こるか考えないといけない。コストと効果を考えないと」などと懸念を表明した。仮に１％ずつの税率引き上げに変更する場合、新たな立法措置が必要と指摘。安倍内閣が今月閣議了解した中期財政計画も見直さざるを得ないとの認識を示した。

　中期財政計画は基礎的財政収支（プライマリーバランス）の赤字を2015年度に半減する目標などを明記している。この目標は日本が民主党政権時の10年６月から掲げている事実上の国際公約で、他の先進国より甘い内容。武藤氏はそのことを踏まえ「これができないと国際的にも厳しい批判にさらされる」と指摘、日本国債格下げも「不可避」とした。そのうえで「長期金利上昇に至る可能性がないわけではない」と警鐘を鳴らした。

　消費増税が景気に影響を及ぼす可能性については最近の欧州各国の付加価値税（消費税に相当）を例に挙げ「ドイツや英国が数年前に実施したときも（マイナスの）影響はほとんどなかった」と指摘した。日本は10％までの消費増税を予定通り実施しても、年２％成長を続けることが可能と主張した。

2013年 8月23日
参照日経電子版

大和総研

大和証券グループ、そして大和総研ホールディングスのシンクタンク、（大和証券グループ向け）システム開発会社、システムインテグレーター。1989年 （平成元年） に、大和証券経済研究所、大和コンピューターサービス、大和システムサービスの三社が合併して設立された。大和証券グループのシステム開発・運用のほか、グループ外の証券会社、通信業者、地方公共団体などのシステム開発・運用を受託している。SI事業のほかには、金融・資本市場に関連するマクロ経済調査、企業調査などのリサーチ事業、経営コンサルティング、年金コンサルティングなどのコンサルティング事業を行っている。

大和総研について